熊本県医師国民健康保険組合特定健康診査等実施計画
はじめに 我我が国の医療保険制度は、国民皆保険の原則に基づき、誰もが安心して医療を受けることができる世界に誇るべき制度である。しかしながら、近年の急速な少子高齢化や経済の低成長等の環境の変化が医療保険制度に与える影響は大きく、将来にわたって制度を持続可能なものとするためには何らかの手だてが必要である。 ここのような中、国においては、国民の健康と長寿を確保しつつ、医療費の伸びの抑制に資するため、生活習慣病を中心とした疾病予防を重視し、「高齢者の医療の確保に関する法律」により医療保険者による健診及び保健指導の充実が図られたところである。熊本県医師国民健康保険は、この趣旨に鑑み、40歳から74歳までの被保険者に対する特定健康診査及び特定保健指導(以下「特定健康診査等」という。)を実施することとし、ここにその計画を定める。
1 達成しようとする目標
熊本県医師国民健康保険の被保険者の受療の状況、生活習慣病及び関連疾患等の疾病構造は別表(医師国保の集団としての疾病特徴や被保険者の健康状態)のとおりである。このような状況を改善し、広く被保険者の健康長寿に資するため、特定健康診査等について以下の目標を設定する。
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平成20年度 |
平成21年度 |
平成22年度 |
平成23年度 |
平成24年度 |
特定健診の受診率(又は結果把握率) |
40% |
50% |
60% |
70% |
80% |
特定保健指導の実施率(又は結果把握率) |
20% |
25% |
30% |
40% |
50% |
内臓脂肪症候群の該当者・予備群の減少率 |
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10%減少 |
2 特定健康診査等の対象者に関する事項
熊本県医師国民健康保険における計画期間中の特定健康診査及び特定保健指導の対象者の総数は、過去5年間の被保険者数の推移と保健事業における各種健診の受診状況などから、下の表1のとおりと推計される。このうち、事業者健診及び「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」の規定に基づき厚生労働大臣が定める者を除した各年度の対象者の推計は表2のとおりである。
(表1)熊本県医師国民健康保険における対象者の総数
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
40〜64 |
男性 |
646人 |
646人 |
646人 |
646人 |
646人 |
女性 |
873人 |
873人 |
873人 |
873人 |
873人 |
|
計 |
1,519人 |
1,519人 |
1,519人 |
1,519人 |
1,519人 |
|
65〜74 |
男性 |
187人 |
187人 |
187人 |
187人 |
187人 |
女性 |
210人 |
210人 |
210人 |
210人 |
210人 |
|
計 |
397人 |
397人 |
397人 |
397人 |
397人 |
(表2)特定健診等の対象者数
健診実施人数 |
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
40〜64 |
男性 |
258人 |
323人 |
388人 |
452人 |
517人 |
女性 |
349人 |
437人 |
524人 |
611人 |
698人 |
|
計 |
608人 |
760人 |
911人 |
1,063人 |
1,215人 |
|
65〜74 |
男性 |
75人 |
94人 |
112人 |
131人 |
150人 |
女性 |
84人 |
105人 |
126人 |
147人 |
168人 |
|
計 |
159人 |
199人 |
238人 |
278人 |
318人 |
|
合計 |
766人 |
958人 |
1,150人 |
1,341人 |
1,533人 |
健診実施率 |
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
40% |
50% |
60% |
70% |
80% |
要保健指導者出現率
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
40〜64 |
男性 |
動機付け(15.5%) |
40 |
50 |
60 |
70 |
80 |
積極的(18.8%) |
49 |
61 |
73 |
85 |
97 |
||
計 |
89 |
111 |
133 |
155 |
177 |
||
女性 |
動機付け(11.5%) |
40 |
50 |
60 |
70 |
80 |
|
積極的(4.5%) |
16 |
20 |
24 |
27 |
31 |
||
計 |
56 |
70 |
84 |
98 |
112 |
||
65〜74 |
男性 |
動機付け(34.3%) |
26 |
32 |
38 |
45 |
51 |
女性 |
動機付け(16.0%) |
13 |
17 |
20 |
24 |
27 |
|
計 |
計 |
39 |
49 |
59 |
68 |
78 |
保健指導実人数 |
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|
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|
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|
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
40〜64 |
男性 |
動機付け |
8人 |
13人 |
18人 |
28人 |
40人 |
積極的 |
10人 |
15人 |
22人 |
34人 |
49人 |
||
計 |
18人 |
28人 |
40人 |
62人 |
89人 |
||
女性 |
動機付け |
8人 |
13人 |
18人 |
28人 |
40人 |
|
積極的 |
3人 |
5人 |
7人 |
11人 |
16人 |
||
計 |
11人 |
17人 |
25人 |
39人 |
56人 |
||
65〜74 |
男性 |
動機付け |
5人 |
8人 |
12人 |
18人 |
26人 |
女性 |
3人 |
4人 |
6人 |
9人 |
13人 |
||
計 |
計 |
8人 |
12人 |
18人 |
27人 |
39人 |
保健指導実施率 |
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H20 |
H21 |
H22 |
H23 |
H24 |
20% |
25% |
30% |
40% |
50% |
3 特定健康診査等の実施方法に関する事項
特定健康診査等の実施方法に関する事項については、以下のとおり定める。
(1)特定健康診査等の実施場所
関係者に別途通知するもとする。
(2)特定健康診査等の実施項目
「具体的な検査項目」
基本的な検査項目
質問項目身体測定(身長・体重・BMI・腹囲)、理学的検査(身体診察)、血圧測定血液化学検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)血糖検査(空腹時または随時)、HbA1c検査、尿検査(尿糖・尿蛋白・尿潜血)、腎機能検査(血清クレアチニン)血清尿酸検査
詳細な検査項目
心電図、眼底検査、貧血検査(赤血球・血色素量(ヘモグロビン値))のうち医師が 必要と判断したものを選択
(3)特定健康診査等の実施時期及び期間
特定健康診査の実施時期は通年とする。
特定保健指導の実施時期は通年とする。
(4)実施者
対象者に別途通知するもとする。
(5)周知及び案内の方法
特定健康診査等の周知は、事業開始前から熊本県医師会ホームページへ掲載し周知に努めるものとする。
また、特定健康診査等の対象者に対する事業への案内方法は、被保険者個人宛に案内状等を送付するとともに、事業開始日から一定期間経過後の被保険者の受診、利用状況から必要があると認めるときは、電話等により、案内に努める。
(6)事業者健診等受診者に係るデータの収集方法
事業者健診等受診者に係るデータについては、被保険者本人の同意を得たうえで、事業主に対して本事業の趣旨の理解を求めるとともに、データの提供を依頼する。
この場合に、データの提供は可能な限り磁気データにより受けるものとするが、事業主が磁気データにより保存していない場合においては、熊本県医師国民健康保険組合において磁気化することとし、その費用は熊本県医師国民健康保険組合が負担する。
また、事業主健診による健康診査の項目が熊本県医師国民健康保険組合が実施する特定健康診査の項目に不足するときは、当該不足項目について被保険者に説明を行うとともに、理解を求め、同意のうえで、熊本県医師国民健康保険組合の負担により実施する。
(7)集合契約
(8)受診券、利用券の様式及び交付時期
利用券及び受診券の様式については、国保連合会が提供する様式とし、利用券には交付年月日、特定健康診査受診券整理番号、受診者の氏名(カタカナ標記)、性別、生年月日、有効期限、特定保険指導区分、窓口での自己負担、保険者所在地、保険者電話番号、保険者番号・名称を記載する。
特定保健指導利用券については、交付年月日、受診券整理番号、受診者の氏名(カタカナ標記)、性別、生年月日、有効期限、健診内容、窓口での自己負担、保険者所在地、保険者電話番号、保険者番号・名称を記載する。
なお、その交付時期は利用券は毎年7月、受診券は毎年5月とする。
(9)代行機関
特定健康診査等の費用の支払及びデータの送信事務に係る業務は、熊本県国民健康保険団体連合会に委託して行うものとする。
(10)特定保健指導の階層化と重点的に行う者
特定健康診査の結果に基づき、以下の基準に沿って階層化するとともに、病気の発症予防・重症化予防で医療費適正化に寄与できると考えられるレベル2のグループから特定保健指導を重点的に行う。
(基準)
@レベルX(健診未受診者グループ)
実態把握と、特定健診への受診勧奨が必要なグループ
Aレベル4(医療との連携グループ)
現在、生活習慣病で治療中の被保険者
Bレベル3(医療との連携グループ)
特定健診受診者のうち、その健診結果が、受診勧奨判定値であり、健診機関の医師の判断により医療機関受診が必要とされたグループ
Cレベル2(特定保健指導グループ)
階層化により、動機づけ支援、積極的支援レベルとなったグループ
Dレベル1(特定保健指導以外の保健指導グループ)
健診結果、階層化により、情報提供レベルだったグループ
(11)実施に関する毎年度のスケジュール及びその他の項目
特定健診及び特定保健指導等の実施にあたっての毎年度のスケジュールは以下のとおりとする。
(スケジュール)
1)特定健診 通年
2)特定保健指導 通年
3)短期人間ドック 6月〜12月
4)一般健康診断5月〜6月
4 個人情報の保護に関する事項
(1)特定健康診査等の記録の保存方法、体制等
特定健康診査等の記録は、磁気媒体により、熊本県医師国民健康保険組合にて保存する。
(2)特定健康診査等の記録の管理に関するルール
熊本県医師国民健康保険組合職員及びその他事業に従事する者(関係事業の委託を受け、その事業の実施を行う者を含む。)は、特定健康診査等の記録の管理等にあたって、「個人情報の保護に関する法律」、国民健康保険法第120条の2、熊本県医師国民健康保険組合個人情報の保護に関する規定第4条の1、第4条の2及び他関連するガイドラインを遵守し、個人情報の保護に万全を期するものとする。
また、熊本県医師国民健康保険組合職員及びその他事業に従事する者(関係事業の委託を受け、その事業の実施を行う者を含む。)、かつてその職にあった者は正当な理由なしに職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
5 特定健康診査等実施計画の公表及び周知に関する事項
この実施計画の公表にあたっては熊本県医師会のホームページに掲載し、特定健診及び特定保健指導が以下の趣旨に基づいて実施されるものであることを普及・啓発することとする。
(趣旨)
健診等の保健事業については、現在、老人保健法や医療保険各法に基づいて市町村、企業、医療保険者によって実施されているが、各健診の役割分担が不明確である、受診者に対するフォローアップが不十分であるとの指摘がされているところである。
このため、健診・保健指導については、
@ 適切に実施することにより、将来の医療費の削減効果が期待され、医療保険者が最も大きな恩恵を受けること
A 医療費のデータと健診・保健指導のデータを突合することができ、より効果的な方法等を分析できること
B 対象者の把握を行いやすいこと
から、保険者が実施主体となることにより、被保険者だけでなく、従来手薄だった被扶養者に対する健診も充実し、健診受診率の向上が見込まれるほか、十分なフォローアップ(保健指導)も期待できることから、保険者にその実施が義務付けられたものである。
上記の趣旨により、国保、健保組合等の保険者は、「高齢者の医療の確保に関する法律」(以下「法」という。)に基づき、40歳以上の被保険者、被扶養者について、平成20年度から糖尿病等の生活習慣病に着目した健診及び保健指導(以下それぞれ「特定健診」、「特定保健指導」という。)を行う。
国民の受療の実態を見ると、高齢期に向けて生活習慣病の外来受療率が徐々に増加し、次に75歳頃を境にして生活習慣病を中心とした入院受療率が上昇している。これを個人に置き換えてみると、不適切な食生活や運動不足等の不健康な生活習慣がやがて糖尿病、高血圧症、高脂血症、肥満症等(以下「糖尿病等」という。)の生活習慣病の発症を招き、外来通院及び投薬が始まり、生活習慣の改善がないままに、その後こうした疾患が重症化し、虚血性心疾患や脳卒中等の発症に至るという経過をたどることになる。
このため、生活習慣の改善により、若い時からの糖尿病等の生活習慣病の予防対策を進め、糖尿病等を発症しない境界域の段階で留めることができれば、通院患者を減らすことができ、更には重症化や合併症の発症を抑え、入院患者を減らすことができ、この結果、国民の生活の質の維持及び向上を図りながら医療費の伸びの抑制を実現することが可能となる。
糖尿病等の生活習慣病は、内臓脂肪の蓄積(内臓脂肪型肥満)に起因する場合が多く、肥満に加え、高血糖、高血圧等の状態が重複した場合には、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが高くなる。このため、内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の概念に基づき、その該当者及び予備群に対し、運動習慣の定着やバランスのとれた食生活などの生活習慣の改善を行うことにより、糖尿病等の生活習慣病や、これが重症化した虚血性心疾患、脳卒中等の発症リスクの低減を図ることが可能となる。特定健康診査・保健指導の対象となる生活習慣病は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者・予備群とする。
平成17年4月に、日本内科学会等内科系8学会が合同でメタボリックシンドロームの疾患概念と診断基準を示した。
これは、内臓脂肪型肥満を共通の要因として、高血糖、脂質異常、高血圧を呈する病態であり、それぞれが重複した場合は、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが高く、内臓脂肪を減少させることでそれらの発症リスクの低減が図られるという考え方を基本としている。
すなわち、内臓脂肪型肥満に起因する糖尿病、高脂血症、高血圧は予防可能であり、また、発症してしまった後でも、血糖、血圧等をコントロールすることにより、心筋梗塞等の心血管疾患、脳梗塞等の脳血管疾患、人工透析を必要とする腎不全などへの進展や重症化を予防することは可能であるという考え方である。
内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の概念を導入することにより、内臓脂肪の蓄積、体重増加が血糖や中性脂肪、血圧などの上昇をもたらすとともに、様々な形で血管を損傷し、動脈硬化を引き起こし、心血管疾患、脳血管疾患、人工透析の必要な腎不全などに至る原因となることを詳細にデータで示すことができるため、健診受診者にとって、生活習慣と健診結果、疾病発症との関係が理解しやすく、生活習慣の改善に向けての明確な動機づけができるようになると考える。
6 特定健康診査等実施計画の評価及び見直しに関する事項
特定健康診査等実施計画の評価については、目標値に対する達成状況を客観的に分析し、行うものとし、その基準は実施結果から導かれる数値を用いる事とする。
計画の見直しは、事業の中間年において行うこととするが、それ以外の年度においても目標値と実施状況が著しくかい離していると認められる場合には、実態を反映した計画への見直しを行うものとする。
7 その他
本組合が実施する短期人間ドック、一般健康診断受診者のうち40歳以上75歳未満の組合員は特定健康診査を受診したものとする。
その他特定健康診査等の円滑な実施を確保するため必要な事項が生じた場合は常務理事会において協議するもとのとする。